サンゴ、クジラの慶良間放生会?

サンゴ、クジラの慶良間放生会?

釣りと方生会

 釣りは、魚介類を対象とした仏教でいう殺生の匪界といえよう。

人間か生きていくのには、仏教でいう「生き物」を食べ物とする「殺生」は避けられない。日本では、この罪を神仏に救ってもらうために、方生会(ほうじょうえ)という生きた魚等を海や池に放流し供養する行事か、古くからあったという。

慶良間諸島国立公園の規制とは?

 ところで最近驚いたことがある。それは慶良間海域に誕生した「慶良間諸島国立公園」の規制内容(素案)を見る機会かあった。指定された海域だけでも約九万五百ヘクタールとなり、これまであった「海岸国定公園」よりも大幅に拡大されたという。

この海域には。先住民の権利ともいうべき。共同漁業権」が先に設定されている。同じ海域に二つの権利か同時に重なることになる。公園設定テーマに「サンゴ礁とクジラの海」を保護することが明示され、その生態系を保全するために捕獲等規副対象種が観賞用魚類を中心に魚類だけでも125種以上が指定されていた。

環境省の資料にも生物種か豊富で、魚類だけで360種という。釣りをする漁業者や遊漁者には、事前に「今まで通りの漁業が可能」と説明していたというが、この海域で釣りをする魚を見分けて漁獲が可能とは、とても思えない。一般の人が素潜りでとれた観賞魚等は、国立公園の海域は事実上、漁獲は不可能になる心配はある。違反すれば。懲役も罰金も覚悟しなければならない。

 サンゴ礁とクジラの保護の前に、魚を釣る人がいて慶良間の海の生態系は守られてきたはずである。「風致景観の保護を図ると共に適正な利用を推進するための公園計画」を定めるとあるが、公園計画の利用メニューには、観光はあっても魚類等海洋資源を適止に利用する視点は少なかったと思えた。

地域漁業活性化と三本の矢

座間味村にも漁業協同組合はあり。広大な漁業権漁場か設定されている。漁業生産で生活を支えるのか本来の目的であり、観光はその補助的な役割という位置づけと思う。

座間味村は、漁業者が観光に協力する姿勢か顕著という。

 ダイビングか生活の中心にあることは明白であるが、海の資源を守りなから利用することが、漁業権設定の意味となろう。座間味村には、恩納村漁協のような地域漁業を活州化させる長期の「漁業活性化計画」かない。恩納村漁協の地道な地域活性化策は、座間味にも必要と思う。離島の経済か安定するには、基盤となる生産活動か求められる。農業・漁業そして海洋観光か三本の矢のように束ねられることか必要でないだろうか?

「景観の保全」は、海域利用者の生活あってのものであり、生産、保全、利用といった生態系の全体を維持することか自然活用型のあるべき姿と思う。利用者への配慮を欠いた生態系保全は、長期的なエコシステムとは程遠いものでは?

 クジラとサンゴ礁をシンボルにするのは分かりやすいが、生活者の視点から、見直す機会も制度の中で明示してほしい。科学的な根拠に乏しい規制内容は、単なる方生会の考えにしかならないのではと危惧している。

 

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